荒野の旅人

荒野の旅人(遊戯王 封印されし記憶実況者)

ツイキャス(文学)とYoutub(遊戯王)中心の記事を投稿していきます。

【書籍紹介①『自殺について』ショーペンハウアー著】

 私がかつて読んだ本かつ、ツイキャスで紹介するかも
しれない本をメモしておきます。
今回紹介するのはドイツの哲学者ショーペンハウアーが書いた
『自殺について』です。
角川ソフィア文庫版です。

作者のショーペンハウアーは当初プラトンとカントを
研究していましたが、
後に仏教の影響を受け、その影響は彼の著作にも及びました。
仏教を理解されている方は彼の思想に
仏教の教えを見出すことができると思います。

『自殺について』は彼の主著である『意志と表象としての世界』の
補足という位置づけになっており、
主著のほうを読んでいないと理解しづらいかもしれません。
ですが、訳者が主著の要点を解説してくれているので大丈夫です。

さて、ショーペンハウアーは世界をどう捉えたのでしょうか?
彼は言います。
「世界は私の表象である。」


この表象という言葉、ぼくなりに理解すると、イメージ、
あるいは感覚器官を通じて認識された
事物のことを指していると思います。
たとえば、「リンゴ」という言葉を聞いて頭の中に浮かんだイメージ、
あるいは実際にリンゴを見たときに五感で認識したリンゴの
情報(色、形、香り、味など)が
リンゴの表象です。

重要なのは、リンゴの表象はリンゴそのものではない
ということです。
なぜなら、リンゴを認識する感覚器官が異なれば
リンゴの表象も変わってしまうからです。

彼は世界が表象だと言います。
つまり、人間は生きるうえでいろいろ経験し、
各人がいろいろなことを表象するわけですが、
それは真実の実態ではないよ、と言っているのです。
同時に彼は世界とは意志であるとも主張します。

この意志というものは「志」という意味ではなく、
「力」あるいは「エネルギー」
のようなものを表しています。
たとえば、重力は地球がその重心に物体を引っ張る力ですが、
これは重力という「意志」です。
そしてこの「意志」の特徴は、決して満足することなく、
無目的に、永遠に続くと彼は言っています。
人間もまたこの意志に基づいて生きているがゆえに、
何をやっても満足できず、苦しみは続くというわけです。

 長々と書きましたが、要するに彼が言っているのは、
「人間が普段認識している世界は世界そのものではない。」
「人間は意志に支配されており、決して満足することはない。」
ということです。

 前置きが長くなりました。『自殺について』の解説に入ります。
彼は自殺を否定しています。その理由が実に興味深いのです。
すなわち、自殺する人は自分の意志を滅ぼしたのではなく、
意志の表れである生命を断ったにすぎない。
意志を滅ぼさない限り、苦しみはなくならないのだから、
自殺をしても問題は解決しない、というわけですね。

ではどうすれば意志を滅ぼすことができるのか。
禁欲生活を送ることによってだ、と彼は言います。
なぜなら、欲望もまた意志であり、欲望の肯定は
意志の肯定に他ならないからです。
彼の理論によれば、苦しみを滅ぼすには
意志を否定する以外ありえないので、
禁欲によってこの意志を否定しなければならない、
というのですね。

 欲望を満たすのではなく、抑制して生きるという
彼の思想は仏教の教えと似ています。
仏教でも欲望を満たそうとすると苦しみが増えるから、
欲望を少なくして生きよと言っています。
もし、彼の主張が理解しにくければ、
仏教を学ぶことから始めるのがよいでしょう。

 長くなりましたが、これで『自殺について』の解説を終わります。