荒野の旅人

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【個人メモ】今までに読んだ本③ スタンダール『パルムの僧院』

 【個人メモ】今までに読んだ本➂ スタンダールパルムの僧院

 ツイキャスで今後紹介する可能性のある本をご紹介。

今回紹介する本はフランスの作家スタンダールの作品『パルムの僧院』です。

 スタンダールの代表作は他に『赤と黒』『恋愛論』などがあります。

それでは解説していきます。

  •  あらすじ
  • 感想
  • まとめ

 

 

 

 

 

時は19世紀。イタリアの青年ファブリスはナポレオンに憧れて

遠征に向かうが、戦場も戦争もよく知らないファブリスは

軍人に馬鹿にされたり、馬を盗まれるなど

振り回される。しかし、なんとか生還する。

 

そして叔母であるジーナ(ピエトラネーラ伯爵夫人)と再会し、

その保護を受ける。

ジーナは宮廷屈指の美人であるが、退屈な生活を送っていた。

そんな彼女にとって有意義な時間とは、

甥であるファブリスとの時間だったのである。

 

その後ジーナはパルム公国の伯爵モスカと懇意になり、

伯爵との生活が始まっていくのだが、モスカは

ジーナとファブリスの仲の良さに

ついて嫉妬の混じった感情で傍観することになる。

 

で、ファブリスは女遊びをしたりはするものの、本気の「恋」とやらは

経験したくともできないようで、叔母のジーナに対しても

本気で恋しているのかはわからない様子。

そんな中ファブリスは、かつて関わった女の現恋人?である

ジレッチに敵意を抱かれ、攻撃を受けたため反撃すると、

ジレッチは死んでしまった。

ファブリスはその後牢獄に入れられ、彼を脱出させるために

ジーナ、モスカが暗躍しつつも、大公エルネスト4世の思惑や、

牢獄でファブリスが出会った

クレリア・コンチとの恋など物語は

より激しさを増していく・・・。

 

大変雑なあらすじだが、こんな感じのお話。

この小説、面白いかどうか聞かれると面白くはない。

同じ著者の『赤と黒』のほうが断然面白い。

 

ではなぜ『パルムの僧院』は面白くないのか、

その理由を考察していこう。

 

1.時代背景がわかりにくい

 

まず、この小説は序盤からいきなりナポレオン軍なり戦争の話なりが

始まるのだが、これは当時のヨーロッパ情勢を知っていないと

甚だ退屈な部分となる。

一応、当時の地図や脚注に若干の補足説明はあるが、

それでも足りない。

やはり体系的な知識はあったほうがいいだろう。

そんなわけで、もしこの作品が読みたい方はフランス、イタリアの歴史、

とくにナポレオン戦争について詳しく調べたうえで

読むといいと思う。

 

 

2.戦闘の描写がわかりにくい

 

この作品に限った話ではないのだが、戦闘の描写というのは

文章ではなかなか伝わってこない。

戦闘は視覚に強く働きかけるものであるから、

言語という概念でそれを表現することは難しい。

音楽同様、言葉での表現に向かない主題なのだ。

その表現しにくい描写が序盤から繰り広げられるので

読者は退屈し、その後の内容が頭に入りにくくなる。

※ もっとも、本作では戦闘のシーンよりも登場人物の心理描写に

重きが置かれているため、戦闘シーンがわからないことが

大問題というわけではない。

 

3.登場人物に感情移入しにくい

 

本作の主人公は一応ファブリスになっている

(ぼくはジーナも主人公だと思っている。とくに後半は)のだが、

3人称小説であること、ファブリスの行動基準がわかりづらいことが

相まってファブリスへ感情移入するのが難しい。

心理描写それ自体は濃密で読みごたえがあるのだが、

その心理自体を理解できずに苦戦する、といったところだろうか。

 

というわけでこの小説が面白くない理由を3つ挙げた。

しかし、スタンダール得意の心理描写は健在で、その点に関しては

素直に評価できる作品といえよう。

そもそも古典は読む側にもある程度の知識が要求されるものだから、

すぐに面白さを感じられるとは限らない、

とぼくは考えていたりもする。

 

以前紹介した『ジェーン・エア』はエンタメとしてかなり面白い作品だ。

多分小学生時代に読んでいたとしても面白かったと思う。

 

 

kouyanotabibito.hatenablog.com

 

だが、これはどこで聞いたのか読んだのか忘れたが、

「古典的著作やクラシック音楽などはすぐに味がわかる

インスタント食品のようなものではなく、じっくりと味わう

食べ物みたいなものだ。予備知識をつけてから

もう一度読んだり、途中から読んだり後ろから読んだり、

ゆっくり精読したり、年をとってから読み返したりして

様々な発見をしていくものだ。

だからすぐに面白さがわからなくても嘆くことはない。

時間をかけて理解していこう。」

という趣旨の文章を読んだ記憶がある

(原文とはかなり違うとは思うが)。

 

当時の僕は名作は誰が読んでも面白いはずだという、

今から考えればいやいやと思えるような前提に立って

文学を読んでいたのだが、そんな僕にとって上のような金言は

認識を改める契機となった。

すぐに理解しようと思わなくてもいい。時間をかけて理解してみよう。

そのような広い心がほんの少しだけ宿ったような気もした。

 

まあ、ぼくは研究者でも作家でもない一素人読者なわけなので、

天才作家の書いたことが一朝一夕に理解できるわけない。

それを基礎として考えれば

「古典を楽しむ精神」を育むことに情熱を傾けられるだろう。

 

というわけでもし「パルムの僧院」を読んでつまらないと感じたら、

そこで読むのをやめてもいいが、時間が経ったときに

もう一度読み返してみてほしい。

つまらないと思っていたところが面白くなっているかもしれない。

結局読書というものは読書の主体によって

受け取り方が変わる。

年を取れば主観は変わっていくから同じものを読んでいても

印象は変わってくると思う。

 

とくに今はコロナ時代。この作品でイタリア旅行気分を味わってみるのも

悪くないのではないか。

ちなみにこの作品も映画化されています。

少しだけ観たんだけど結構難解だと思う。

まあ、原作の時点で読みやすい小説じゃないので必然なんだけど。

 

 

というわけで今回はここまで。

ご精読ありがとうございました!